第3回:課題発見とユーザーリサーチ計画
本日の到達目標
- 解決すべき課題がどこから生まれるのかを理解する。
- ユーザーリサーチとKPIの役割の違いを説明できる。
- 目的のあるリサーチを行うための「リサーチ計画」を作成できる。
1. そもそも「課題」はどこにあるのか?
我々が解決すべき「課題」は、闇雲に探すものではない。それは通常、3つの領域が交差する点に存在する。
- ビジネスの目標 (Business Goals):
- 企業や組織が達成したいことは何か? (例:売上向上、コスト削減、新規顧客獲得)
- ユーザーのニーズ (User Needs):
- ユーザーが達成したい目標や、抱えている不満は何か?
- 技術の可能性 (Technology):
- 現在の技術で何が実現可能か?
優れたUXデザインは、これら3つのバランスを取りながら、最適な解を見つけ出すプロセスである。
2. 仮説を立て、検証する:リサーチとKPIの両輪
我々はユーザーではない。作り手が「こうだろう」と立てる仮説や思い込みは、ほとんどの場合間違っている。この思い込みを破壊し、正しい道筋を見つけるために、我々は「リサーチ」と「KPI」という両輪を必要とする。
2-1. 定性リサーチと定量リサーチ
リサーチは、ユーザーの行動の背景にある「なぜ?」を探るための羅針盤である。
- 定性リサーチ (Qualitative Research)
- 目的:「なぜ」「どのように」といった、行動の背景にある理由や文脈を深く理解する。
- 手法: ユーザーインタビュー、行動観察など。
- 得られるもの: 言葉、ストーリー、感情、インサイト(深い洞察)。
- サンプル数: 少数(5~10人程度)。
- 定量リサーチ (Quantitative Research)
- 目的:「どれくらい」「何人が」といった、行動の規模や割合を数値で把握する。
- 手法: アンケート、アクセス解析など。
- 得られるもの:数値、グラフ、統計データ。
- サンプル数:多数(100人以上が望ましい)。
思考の順序: 多くの場合、定性リサーチで課題の仮説を立て、定量リサーチでその仮説がどれくらいの規模で存在するのかを検証する、という流れが効果的である。
2-2. 効果検証の指標: KPI (重要業績評価指標)
リサーチが「なぜ?」を探るのに対し、プロダクト改善の結果として「何が」起きたのかを客観的に計測するのがKPIの役割だ。
KPI (Key Performance Indicator)とは、ビジネス目標の達成度を測るための具体的な数値指標である。
- なぜKPIが重要か?
- 客観的な判断基準: デザイン変更の良し悪しを、個人の感想ではなく数値データで判断できる。
- 目標の明確化: チーム全員が同じ数値目標に向かって進むことができる。
- 効果の可視化: 施策がビジネスにどれだけ貢献したかを証明する根拠となる。
- KPIの例:
- ECサイト: 購入完了率 (コンバージョンレート)、平均注文額
- 情報サイト: ページビュー数、平均滞在時間
- 会員制サービス: 新規登録者数、解約率(チャーンレート)
リサーチとKPIの関係: ユーザーリサーチで発見した課題(例:「登録プロセスが複雑で不安」)を解決するための施策を行い、その結果としてKPI(例:「登録完了率」)が改善したかを計測することで、デザインの有効性を証明する。
3. リサーチ計画:成功へのロードマップ
行き当たりばったりのリサーチは、時間とコストの無駄に終わる。リサーチを始める前に、必ず「リサーチ計画書」を作成し、チーム内で合意形成を行う。
リサーチ計画に含めるべき項目
- 背景と目的 (Background & Goals)
- なぜこのリサーチを行うのか? プロジェクトの背景は何か?
- このリサーチを通じて、何を明らかにしたいのか? (例:学生の履修登録における課題を明らかにし、システム改善の方向性を定める)
- リサーチクエスチョン (Research Questions)
- リサーチで明らかにしたい「問い」を具体的にリストアップする。目的よりも具体的で、行動に繋がりやすい問いを立てる。
- (例:学生はどのような情報源を基に履修計画を立てているか? 計画段階でどのような点に不安や不満を感じるか?)
- 対象者 (Participants)
- 誰に話を聞くか? どのような条件の人か?
- (例:情報科学専門学校の1~2年生、最低でも1回以上の履修登録経験者、5名)
- 手法 (Methodology)
- どのような方法でリサーチを行うか?
- (例:1対1の半構造化インタビュー、1人あたり60分)
- スケジュールと体制 (Schedule & Logistics)
- いつ、どこで、誰がリサーチを行うのか?
- (例:インタビュー実施期間、場所、インタビュアー、書記など)
演習:ミニ・リサーチ計画の作成
- 中間課題のテーマである「岩崎学園の学生生活を向上させる」について、チームで具体的な課題領域を一つ設定する。(例:昼食問題、施設予約、友人との交流など)
- 設定した課題領域について、リサーチ計画の主要項目を作成する。
- 背景と目的
- リサーチクエスチョン
- 対象者
- 手法
- スケジュールと体制
- もし、この課題を解決するプロダクトを作った場合、その成功を測るためのKPIを一つ設定する。(例:昼食問題なら「昼食を決めるまでの平均時間」、施設予約なら「予約システムの利用率」など)
- 作成した計画とKPIを発表する。
第4回:ユーザーリサーチ実践①: インタビューと観察
本日の到達目標
- ユーザーから深い情報を引き出すためのインタビューの基本を習得する。
- ユーザーの行動をありのままに捉えるための観察の基本を理解する。
- インタビューのロールプレイングを実践できる。
1. インタビュー:ユーザーの「物語」を聞く技術
インタビューは、ユーザーの経験、感情、動機といった「なぜ」の部分を深く掘り下げるための最も強力な手法の一つである。我々の仕事は、相手を尋問することではなく、心地よく「物語」を語ってもらう環境を作ることだ。
1-1. インタビューの設計
- 半構造化インタビュー: 事前に大まかな質問リスト(インタビューガイド)は用意するが、会話の流れに応じて柔軟に質問を変えたり、深掘りしたりする手法。UXリサーチでは最も一般的に用いられる。
- 良い質問の作り方:
- オープンクエスチョン (開かれた質問)を使う: 「はい/いいえ」で終わらない、「5W1H」で始まる質問を心がける。(例:「履修登録をする時、どのように情報を集めますか?」)
- 過去の具体的な行動について聞く: 人は未来の行動を予測するのが苦手だ。「もし~だったらどうしますか?」ではなく、「最後に〜した時のことについて、詳しく教えてください」と尋ねる。
- 誘導尋問を避ける: 「この機能は便利だと思いませんか?」のような、答えを誘導する質問はしない。
1-2. インタビューの実践
- ラポールを築く: 最初に自己紹介や雑談を通じて、相手の緊張をほぐし、信頼関係を築くことが最も重要。
- 沈黙を恐れない: ユーザーが考えている沈黙は、金である。焦って次の質問を投げかけず、じっと待つ。
- 相槌と深掘り: 「なるほど」 「面白いですね」といった相槌で、話を聞いていることを示す。「それについて、もう少し詳しく教えていただけますか?」 「その時、どう感じましたか?」といった言葉で、さらに深く掘り下げる。
- オウム返し: ユーザーが言った重要なキーワードを繰り返すことで、相手は「理解してくれている」と感じ、さらに話しやすくなる。(例:「『絶望的な気分になった』んですね...」)
2. 観察:ユーザーの「真実」を見る技術
人は、言うこととやることが違う生き物である。ユーザーが「いつもこうしています」と語ることが、実際の行動とは全く異なる場合がある。観察(行動観察、エスノグラフィ)は、ユーザーが普段いる環境(コンテキスト)の中で、ありのままの行動を捉えることで、インタビューだけでは見えてこない「無意識の行動」や「暗黙のニーズ」を発見する手法だ。
2-1. 観察の心構え
- 事実と解釈を分ける: 観察中は、起こった「事実」のみを記録することに集中する。(良い例:「ユーザーは3回ため息をついた」/悪い例:「ユーザーはイライラしているようだ」)解釈は、後でチームで行う。
- AEIOUフレームワーク: 観察する際に、何に注目すべきかのガイドとなる。
- Activities (活動): 人々は何をしているか?
- Environments (環境): どのような場所で、どのような雰囲気か?
- Interactions (相互作用): 他の人やモノと、どのように関わっているか?
- Objects (モノ): どのようなモノが、どのように使われているか?
- Users (ユーザー): 誰がいて、どのような役割を担っているか?
演習: インタビュー・ロールプレイング
- 3人1組のチームを編成する(インタビュアー、ユーザー、観察者)。
- テーマ: 「あなたが普段、岩崎学園の周辺で昼食をどのように決めて、食べているか」
- 役割:
- インタビュアー (10分): 作成したインタビューガイドを基に、ユーザー役から具体的な行動や感情を引き出す。
- ユーザー (10分): 自身の普段の行動を正直に、具体的に語る。
- 観察者 (10分): 会話の内容だけでなく、ユーザー役の表情や仕草など、言葉以外の情報も記録する。
- フィードバック (5分): 3人で役割を交代しながら、インタビューの良かった点や改善点を話し合う。
第5回:ユーザーリサーチ実践②: 分析と統合
本日の到達目標
- リサーチで得られた定性データを、構造化して分析する手法を理解する。
- アフィニティ図 (KJ法)を作成し、データからインサイトを導き出すことができる。
- ユーザーへの共感を深めるための、共感マップの作り方を理解する。
1. 分析と統合:混沌から意味を見出す
インタビューや観察を終えた後、我々の手元には、膨大な量の発言録、メモ、写真といった混沌としたデータ(=Raw Data) が残される。分析と統合 (Synthesis) のフェーズは、この混沌としたデータの中から、意味のあるパターンや関連性を見つけ出し、チームの共通認識となる「インサイト(深い洞察)」を抽出するプロセスである。
これは、生肉を調理して、栄養価の高いステーキに仕上げる作業に似ている。
2. アフィニティ図 (KJ法): データの構造化
アフィニティ図 (KJ法)は、文化人類学者である川喜田二郎氏が考案した手法で、集めた定性データをボトムアップで構造化するための強力なツールである。
目的: 個々の事実や意見を、それらの親和性 (Affinity) に基づいてグループ化し、データの背後にある構造や本質的な課題を明らかにする。
アフィニティ図の作成ステップ
- データの断片化:
- インタビューの発言録や観察メモから、意味のある事実、意見、行動を一つの文脈につき一枚の付箋に書き出す。
- (例:「どの店が空いているか分からず、歩き回って疲れる」「友人と食べたいものが違うと、店選びに時間がかかる」)
- グループ化(沈黙の作業):
- チームメンバーは会話をせず、各自が付箋を読み、似ている、関連性があると感じるものを集めてグループを作っていく。
- なぜ沈黙で行うのか?→言葉による同調圧力を排し、各自の直感的なグルーピングを尊重するため。
- グループのラベリング:
- 出来上がったグループに、そのグループの本質を最もよく表す名前(ラベル) をつける。これはチームで対話しながら行う。
- (例:「店選びの不確実性」「時間的制約による焦り」)
- 構造化:
- グループ間の関係性(例:原因と結果、対立関係など)を見つけ出し、矢印などで繋ぎ、図として構造化する。
- この図全体が、ユーザーが抱える課題の構造を示している。
3. 共感マップ: ユーザーの頭の中を覗く
共感マップ (エンパシーマップ)は、特定のユーザーについてチームが知っている情報を整理し、ユーザーへの共感を深めるためのツールである。インタビューで得られた情報を基に作成し、ペルソナ作成への橋渡しとなる。
共感マップの4象限
ユーザーの視点から、以下の4つの象限を埋めていく。
- SAYS (言っていること)
- インタビュー中に、ユーザーが実際に口にした言葉や印象的な発言を書き出す。
- (例:「もっと野菜が取れるランチがあると嬉しいんだけどね」)
- THINKS (考えていること)
- ユーザーが口には出さなかったが、思っているであろうこと。表情や文脈から推測する。 (例:本当はもっと健康に気を使いたいと思っている)
- DOES (やっていること)
- インタビュー中や観察中に、ユーザーが実際にとった行動を書き出す。
- (例:メニューを見ながら、スマホでカロリーを調べていた)
- FEELS (感じていること)
- ユーザーがどのような感情を抱いているか。ポジティブな感情、ネガティブな感情(ペイン)を書き出す。
- (例:【ペイン】健康的な食事を選ぼうとすると、選択肢が少なくてがっかりする)
インサイトの抽出
共感マップを完成させた後、チームで以下の問いについて議論する。
- SAYSとDOESの間に矛盾はないか? (例:「健康が大事」と言いながら、ジャンクフードを食べている)→この矛盾にこそ、インサイトの種が隠れている。
- ユーザーの本当の「ペイン(悩み、苦痛)」は何か?
- ユーザーが本当に達成したい「ゲイン(願望、目標)」は何か?
この分析から、「(ユーザー)は、(~という状況)で、(~を)必要としている。なぜなら、(~という本質的な理由)だからだ。」という形の、行動に繋がるインサイトが生まれる。
演習:ミニ・アフィニティ図と共感マップの作成
- 前回のインタビュー・ロールプレイングで得られた(という想定の)発言や観察データを、教員がリストとして配布する。
- チームで付箋に書き出し、アフィニティ図を作成してグルーピングとラベリングを行う。
- 主要なグループを基に、共感マップを作成し、ユーザーのペインとゲインを議論する。
第6回:ユーザーのモデル化:ペルソナ
本日の到達目標
- ペルソナの目的と役割を説明できる。
- リサーチデータに基づいて、ペルソナを作成する方法を理解する。
- 良いペルソナと悪いペルソナの違いを説明できる。
1. ペルソナとは何か?
ペルソナとは、ユーザーリサーチで得られたデータに基づき、ターゲットとなるユーザー層を代表する、架空の人物像である。単なる属性のリストではなく、具体的な顔、名前、目標、悩みを持つ、血の通った一人の人間として描き出す。
なぜペルソナを作成するのか?
- チームの共通認識を作る:
- 「ユーザー」という曖昧な言葉の代わりに、「情報科学科2年の佐藤健太くん」という具体的な人物を据えることで、チーム内の認識のズレを防ぐ。
- 共感を維持し、意思決定の拠り所にする:
- 開発が進むと、作り手の都合が優先されがちになる。その時、「この機能は、健太くんにとって本当に必要だろうか?」と立ち返ることで、人間中心の視点を保つことができる。
- "都合の良いユーザー"の排除:
- ペルソナがいないと、設計者は無意識に自分自身や、あらゆる要求を満たす「伸縮自在のユーザー」を想像してしまう。ペルソナは、設計のターゲットを明確に固定する。
2. 良いペルソナの構成要素
ペルソナに含めるべき情報に厳密な決まりはないが、一般的に以下の要素が含まれる。
- 基本情報:
- 顔写真(架空だが、人物像を想起させるもの)
- 名前、年齢、所属(例:情報科学専門学校 実践AI科3年)
- パーソナリティ:
- その人らしさを表すキャッチーな引用句(例:「効率が悪いのは嫌い。最短ルートでゴールしたい」)
- 性格や価値観を簡潔にまとめたプロフィール
- 目標(Goals):
- 我々のプロダクトを通じて、ユーザーが最終的に達成したいことは何か?
- (例:卒業に必要な単位を、興味のある分野で効率的に取得したい)
- 課題・不満(Frustrations / Pains):
- 目標を達成する上で、現在どのようなことに困っているか?
- (例:どの科目が自分のキャリアに繋がるか分からず、選択に時間がかかる)
- スキル・利用環境:
- ITリテラシー、利用するデバイス (PC/スマホ)、利用する時間帯や場所など。
3. リサーチデータからペルソナを作る
ペルソナは、作家が小説の登場人物を作るように創作するものではない。あくまでも、これまでのリサーチで得られたデータに基づいて論理的に構築される。
ペルソナ作成のステップ
- リサーチデータのレビュー:
- インタビューや観察で得られたデータ、アフィニティ図、共感マップを再度見直す。
- 行動パターンの洗い出し:
- ユーザーの行動、動機、利用環境などについて、特徴的な軸を見つけ出す。(例:「計画的に行動する↔行き当たりばったり」 「テクノロジーに精通↔苦手意識がある」)
- ユーザーのグルーピング:
- 洗い出した軸を基に、類似した行動パターンを持つユーザーをグループに分ける。
- ペルソナの骨格作成:
- 各グループを代表するペルソナの骨格を作る。この時点で、主要なターゲットとなるプライマリーペルソナを決定する。通常、1~2名に絞る。
- 詳細の肉付け:
- リサーチデータから得られた具体的なエピソードや発言を引用しながら、ペルソナのプロフィール、目標、課題などを詳細に記述していく。
やってはいけないペルソナ
- ステレオタイプ: 「最近の若者は~」といった、データに基づかない安易な決めつけ。
- 都合の良い人物像: 作り手が作りたい機能の「完璧なユーザー」を創り出してしまう。
- データとの乖離: リサーチ結果から説明できない目標や課題が含まれている。
演習: プロト・ペルソナの作成
- これまでの演習で作成したアフィニティ図や共感マップを基にする。
- チームで、岩崎学園の学生を代表するペルソナの主要な要素(名前、所属、目標、課題)をディスカッションし、A4用紙1枚にまとめる。
- なぜその目標と課題を設定したのか、リサーチデータ(という想定)と結びつけて説明できるように準備し、発表する。
第7回:ユーザー行動の視覚化: カスタマージャーニーマップ
本日の到達目標
- カスタマージャーニーマップの目的と構成要素を説明できる。
- ユーザーの行動、思考、感情を時系列で可視化する方法を理解する。
- As-ls(現状)のジャーニーマップを作成し、課題と機会を発見できる。
1. カスタマージャーニーマップとは何か?
カスタマージャーニーマップ (CJM)とは、ペルソナが特定の目標を達成するまでの一連のプロセス(=旅、ジャーニー)を、時間軸に沿って可視化したものである。
なぜジャーニーマップを作成するのか?
- 体験の全体像を把握する: 個々の画面や機能(点)ではなく、ユーザーの一連の体験(線)としてプロダクトを捉えることができる。
- 課題(ペインポイント)の特定: ユーザーの感情が落ち込む瞬間や、行動が滞る箇所を特定し、改善の優先順位付けに役立てる。
- 機会(オポチュニティ)の発見: ユーザー体験を向上させるための新しいアイデアや機能のヒントを得る。
- 部門横断の共通言語: チームや関係者全員が、ユーザー体験の全体像について同じ地図を見て議論できるようになる。
2. ジャーニーマップの構成要素
ジャーニーマップのフォーマットは様々だが、一般的に以下の要素で構成される。
- ペルソナ:
- この旅の主人公は誰か。
- シナリオとゴール:
- ペルソナがどのような状況で、何を達成しようとしているのか。(例:シナリオ「来期の履修登録を行う」、ゴール「興味のある科目で、卒業要件を満たす時間割を完成させる」)
- フェーズ (Phases / Stages):
- 旅を構成する大きな段階。時間軸の区切り。(例:情報収集計画→登録→確認)
- 行動(Actions):
- 各フェーズで、ペルソナが具体的にとる行動。(例:シラバスサイトを見る、友人に相談する、システムにログインする)
- 思考(Thoughts):
- その行動をしている時、ペルソナが考えていることや疑問。(例:「この科目は本当に自分のためになるだろうか?」 「エラーが出たけど、どうすればいいんだ?」)
- 感情(Emotions / Feelings):
- 各フェーズにおけるペルソナの感情の起伏を線グラフなどで表現する。ポジティブ(期待、満足)か、ネガティブ(不安、不満)か。
- タッチポイント (Touchpoints):
- ペルソナがプロダクトやサービスと接する具体的な場所や媒体。(例: PCサイト、スマホアプリ、友人との会話、掲示板)
- 課題(Pain Points) と機会 (Opportunities):
- ジャーニーマップ全体を俯瞰し、特に感情が落ち込んでいる箇所や、行動が非効率な箇所を「課題」として洗い出す。そして、その課題を解決するためのアイデアを「機会」として記述する。
3. As-Is vs. To-Be ジャーニーマップ
ジャーニーマップには、現状を分析するためのものと、理想を描くためのものの2種類がある。
- As-Is ジャーニーマップ (現状マップ)
- 目的:ユーザーリサーチに基づき、現在の体験をありのままに可視化する。
- 焦点: 既存のプロセスにおける課題(ペインポイント)を発見すること。我々はまず、このAs-Isマップの作成から始める。
- To-Be ジャーニーマップ (理想マップ)
- 目的: 我々のソリューションによって、未来の理想的な体験がどのようになるかを可視化する。
- 焦点: As-Isマップで発見した課題をどのように解決し、ユーザーの感情をどのように向上させるかを示すこと。プロジェクトのゴールイメージを共有するために使う。
As-Is ジャーニーマップ作成のステップ
- 前提条件を定義する: 主人公となるペルソナと、そのペルソナが体験するシナリオ、達成したいゴールを明確にする。
- フェーズを洗い出す: ゴールに至るまでの大まかな段階をリストアップする。
- 行動・思考・感情を埋める: ユーザーリサーチのデータを参照しながら、各フェーズでペルソナが「何をし、何を考え、どう感じているか」を付箋などに書き出し、マッピングしていく。
- タッチポイントを特定する: 各行動がどのタッチポイントで発生しているかを明確にする。
- 課題と機会を発見する: 特に感情の谷となっている部分や、行動に無駄が多い部分に着目し、チームで課題とそれを解決する機会について議論する。
演習: As-ls カスタマージャーニーマップの作成
- 前回の演習で作成したプロト・ペルソナを主人公とする。
- シナリオ: 「来期の履修登録を計画し、実行する」
- チームで、このシナリオにおけるAs-Is (現状)のジャーニーマップを模造紙やホワイトボードに作成する。
- フェーズ例:認知→情報収集計画→登録→確認
- 特に大きな「ペインポイント」を3つ特定し、それを解決するための「機会(アイデア)」を議論する。
- 作成したジャーニーマップと、発見したペインポイントを発表する。(この成果は中間課題に直結する)