DX入門~社会課題解決の実践~

基本情報

  • 授業名: DX入門~社会課題解決の実践~
  • 対象学科: 情報セキュリティ学科、実践AI科 (3・4年生)
  • 授業回数: 全15回
  • 主軸教科書: 『デジタルトランスフォーメーション (DX)の全貌: 定義、戦略、実践、そして未来への展望』(以下、「主軸レポート」)
  • 補足資料: 『1冊目に読みたいDXの教科書』(以下、「補足教科書」)

到達目標

本授業の目的は、単にDXの知識を学ぶことではない。ITの専門知識を持つ諸君が、それを社会でどう活かすべきかを知り、「社会課題を自らの技術で解決する社会人」となるための心構えと実践的思考法を身につけることにある。

  1. DXがなぜ社会やビジネスに変革を迫るのか、その本質を理解し、自身の言葉で語れるようになる。
  2. 「2025年の崖」をはじめとする社会・企業の課題に対し、当事者意識を持って向き合えるようになる。
  3. データに基づき意思決定を行う「データドリブン」な思考の重要性を理解し、その基礎を実践できる。
  4. クラウド、AI、IoTといった技術が、単なるツールではなく、「モノづくりからコトづくりへ」という価値変革を実現する手段であることを体系的に理解する。
  5. 自らが関心を持つ社会課題に対し、DXによる解決策を企画・提案することで、未来を創造する第一歩を踏み出す。

授業内容

本授業は、諸君がこれからIT業界で活躍する上で必須となる「DX」をテーマに、「社会人として社会課題を解決する」とはどういうことかを実践的に学ぶ場である。「主軸レポート」で戦略的視点を、「補足教科書」で基礎知識を学びながら、最終的には自らの手で社会課題解決の企画を立案する。これは、技術者としての専門性を、社会を動かす力へと転換するための「入門」授業である。

授業スケジュール

テーマ 内容 主軸レポート 補足教科書
【第1部:DXの本質と戦略的必要性】
第1回 DXの本質と定義 なぜDXを学ぶのか? DXの起源と社会変革の歴史、「IT化」との違いを理解し、学ぶ意義を確立する。 第1章 第1章前半
第2回 日本がDXを迫られる背景①:「2025年の崖」 レガシーシステム、人材不足など、我々がこれから向き合う社会の構造的課題を直視する。 第2.1節 第2章
第3回 日本がDXを迫られる背景②: 政策と市場の変化 国の動き( Society 5.0)、そして消費者の行動変化が、我々の仕事にどう影響するかを学ぶ。 第2.2, 2.3節 第2章
【第2部:DX推進の戦略と技術】
第4回 DX推進の要: リーダーシップとビジョン 「DXごっこ」に陥らず、変革を成し遂げるリーダーに必要なビジョン策定の要点を学ぶ。 第3.1節 第1章後半
第5回 変革の土台:組織文化とDX人材戦略 経営資源の変化(モノ→コト)を理解し、変化に対応できる組織と、そこで価値を生む人材像を探る。 第3.2, 3.3節 第1章,第7章
第6回 DXを駆動するコア技術スタック Al、IoT等の技術が、人間の能力をどう拡張し、社会にどのような価値をもたらすかを体系的に学ぶ。 第4章 第3章
第7回 中間課題:DX事例分析と改善提案 成功と失敗の事例から、当事者として「自分ならどうするか」を思考し、社会人としての視座を養う。
【第3部:DXの実践と未来展望】
第8回 産業構造の破壊と再編:デジタルディスラプション なぜ新しいサービスが既存の産業を破壊するのか、そのメカニズムを学び、未来を予測する力をつける。 第5.1節 第4章
第9回 競争優位の源泉:データドリブンと顧客体験(CX) データに基づき高速で改善を繰り返す「超高速PDCA」の概念を学び、顧客価値向上の核心に迫る。 第4.2, 5.2節 第1章,第6章
第10回 【専門領域】産業別DXケーススタディ 製造、小売、金融等の事例から、自らの専門性(セキュリティ/AI)が社会でどう貢献できるかを具体化する。 第5.3節 第5章
第11回 DXの未来展望: 次なる変革の波 メタバース、GX、Web3.0など、我々がこれから創造していく未来の社会像を構想する。 第6章 第8章
第12回 最終課題プロジェクトワーク 1 【Work①】あなたが解決したい社会課題の定義と深掘り。
第13回 最終課題プロジェクトワーク 2 【Work②】 デジタル技術を用いたソリューションの具体化。デザイン思考や各種フレームワークを活用。 第6章
第14回 最終課題プロジェクトワーク 3 【Work①②】の統合とDX企画書への落とし込み。 第8章
第15回 最終課題発表会および総括 チームによるDX戦略提案、全体講評。未来を担う人材として持つべき3つのスキルの確認。

評価方法

  • 出席点(30%): 各回の授業の出席率
  • 平常点(30%): 各回の授業アンケートの提出率
  • 中間課題(レポート): 20%
  • 最終課題(企画書・プレゼンテーション): 20%

課題詳細

中間課題:DX成功・失敗事例の比較分析と自社への示唆

  • 目的: 成功と失敗を分ける要因を構造的に理解し、単なる評論家ではなく、当事者として解決策を思考する社会人としての視座を養う。
  • 概要: DXの「成功事例」と「失敗事例」をそれぞれ1つずつ選定し、調査・分析を行う。その上で、もし自分がその失敗企業のDX推進担当者であったならば、成功事例から何を学び、どのように戦略やプロセスを修正したかを具体的に提案すること。
分析の必須観点:
  1. DXビジョンの明確さ: ビジョンは存在したか。全社に共有されていたか。
  2. リーダーシップ: 経営トップはどのように関与したか。
  3. データ活用: データは意思決定に活用されていたか。「データドリブン」な文化はあったか。
  4. 組織・文化: 部門間の連携は円滑だったか。挑戦を許容する文化はあったか。

最終課題:社会課題解決のためのDX戦略企画・提案

  • 目的: これまで学んだ知識とスキル、そして自身の専門性を総動員し、社会課題解決者としての第一歩を踏み出す。
  • 概要: チームで自らが解決したいと考える具体的な社会課題を一つ設定する。その課題を解決するための新しいサービスや事業を構想し、それを実現するための包括的なDX戦略を企画書としてまとめ、未来の社会を担う当事者としてプレゼンテーションを行う。
企画書に含めるべき項目:
  1. 解決したい社会課題と現状分析 (As-Is): なぜその課題が重要なのか。現状の何が問題なのか。
  2. DXビジョンと変革後の社会 (To-Be): DXによって実現したい未来の姿。
  3. ソリューションと提供価値: 具体的なサービス内容と、それによってもたらされる新しい「コト」としての体験価値
  4. ビジネスモデル:リーンキャンバス等のフレームワークを用いて、事業の全体像を整理する。
  5. データドリブン・サイクル: サービスを継続的に改善するためのデータ収集・分析・活用(超高速PDCA)の仕組みを具体的に設計する。
  6. 専門領域からの重点提案(必須):
    • ■ 情報セキュリティ: サービス提供における個人情報保護、サイバー攻撃対策、信頼性担保のための技術的・組織的施策。
    • ■ 実践AI: サービスのコア機能におけるAIの役割、データセットの構築方法、アルゴリズムの選定理由など。
  7. 変革のプロセス: このDXを実現するための変革プロセスを「企業変革における8段階」などを参考に記述する。