本研修のゴール
- 生成AIへの漠然とした不安を、「活用できる」という期待感に変える。
- 明日から使える具体的なAI活用法(授業準備・校務)を3つ以上習得する。
NotebookLM を使い、自身の担当業務に関する情報整理を体験する。
Part 1: 生成AIとは何か?
はじめに
本研修では、多忙な先生方の業務を支援するツールとして注目される「生成AI」の活用法について解説します。
本研修の目的は、先生方の業務負担を軽減し、それによって生まれる時間を生徒との対話や、より創造的な教育活動に充てていただくことにあります。
生成AIの基本的な考え方
生成AI(ジェネレーティブAI)とは、一言でいえば**「新しいものを創り出す(生成する)ことができるAI」**のことです。
従来のAIは、画像に写っているものが「犬」か「猫」かを見分けるような「分類」や、過去のデータから未来の売上を「予測」することが主な役割でした。それに対して生成AIは、大量の文章や画像を学習することで、まるで人間のように自然な文章を書いたり、存在しないはずの絵を描いたり、複雑な質問に答えたりすることができます。
例えるなら、非常に優秀で物知りな、**24時間働くアシスタント**や**教育実習生**のような存在だと考えてください。私たちが「プロンプト」と呼ばれる指示を出すことで、様々な知的作業を手伝ってくれます。
代表的な生成AIツール
本日体験していただくものも含め、いくつかの代表的な生成AIを紹介します。すべてChromebookのブラウザから無料で利用開始できます。
| サービス名 |
開発元 |
特徴 |
| ChatGPT |
OpenAI |
生成AIブームの火付け役。人間らしい自然な対話が非常に得意で、文章作成、要約、アイデア出しなど、幅広い用途で高い性能を発揮します。 |
| Gemini |
Google |
Google検索の最新情報と連携できるため、新しい情報や事実に基づいた回答が得意です。本日の演習では主にこちらを利用します。 |
| Copilot |
Microsoft |
Windowsや検索エンジンBingに統合されており、文章生成だけでなく高品質な画像生成(DALL-E 3)も無料で利用できるのが大きな強みです。 |
| NotebookLM |
Google |
教員向けの特に強力なツール。PDFやテキストファイルなどの資料をアップロードすると、その内容をAIが完全に理解し、資料に基づいた質問応答や要約、文書作成を行ってくれます。校務での活用に最適です。 |
Part 2: 導入デモンストレーション (15分)
まず、生成AIが持つ能力を具体的にご理解いただくため、いくつかのデモンストレーションをご覧に入れます。
デモ1:【画像生成】授業で使える画像の作成
簡単な指示文を入力するだけで、授業で使える挿絵やポスターの素材を数秒で作成できます。著作権の問題もクリアできます。
Microsoft Copilot で試す
↓以下のプロンプト(指示文)をコピーしてご活用ください。
高校の化学の実験室が舞台。フラスコから虹色の煙が出ていて、白衣を着た男女の高校生が安全ゴーグルをかけて、驚きと興奮の表情で見ている。明るく楽しい雰囲気のイラスト。
デモ2:【文章生成】学校行事のアイデア出し
アイデア出しのような、思考時間を要する業務において、AIは有能な相談相手となります。
Google Gemini で試す
↓以下のプロンプト(指示文)をコピーしてご活用ください。
横須賀工業高校の体育祭で使うスローガンを10個考えてください。キーワードは「技術」「青春」「団結」「未来」で、元気が出るようなものを提案してください。
Part 3: 実践① - 授業準備編 (Google Gemini) (25分)
【演習】 Geminiの活用
2つの演習を通して、AIによる授業準備の効率化を体験します。
演習1:「個別最適な学び」のための小テスト作成 (10分)
ご自身の担当教科で、生徒の習熟度に応じた3段階の小テストを作成します。
- 下の青いボタン「Google Gemini を開く」をクリックしてください。インターネットの新しいタブ(ページ)が開きます。
- 下のグレーの枠線で囲まれた部分(プロンプト)の**文章全体を、マウスでドラッグして選択**してください。
- 選択した状態でマウスを右クリックし、「コピー」を選びます。(キーボードの Ctrl + C でもコピーできます)
- 先ほど開いたGeminiのタブに切り替え、一番下にある「ここにプロンプトを入力」というボックスで右クリックし、「貼り付け」を選びます。(Ctrl + V でも貼り付けできます)
- 貼り付けた文章の【】の中身を、ご自身の担当教科やテーマに合わせて書き換えてください。
- 最後に、紙飛行機のマークの送信ボタンを押してください。AIが小テストを作成します。
Google Gemini を開く
あなたは【化学】科のベテラン教師です。以下のテーマについて、生徒の習熟度に応じた3種類の小テストを作成してください。
テーマ:【中和滴定】
* 基礎レベル:正誤問題や選択問題を中心に5問
* 標準レベル:簡単な用語説明を3問
* 応用レベル:「なぜそうなるのか?」を問う記述式の問題を1問
演習2:「協働的な学び」のためのグループワーク考案 (10分)
生徒が主体的に活動するグループワークの指示書を作成します。(手順は演習1と同じです)
Google Gemini を開く
あなたは【歴史】科の教師です。次の50分の授業で実施するグループワークの活動案を作成してください。
テーマ:【ペリー来航が横須賀に与えた影響】
グループ:4人1組
含める要素:
* 活動の目的
* 具体的な手順
* 各メンバーの役割(リーダー、書記、タイムキーパー、発表者など)
* 成果物のイメージ
Part 4: 実践② - 校務効率化編 (NotebookLM) (30分)
【演習】 公的文書の読解と活用
今回は、文部科学省が発行した「高等学校キャリア教育の手引き」を題材に、長大なPDF資料から必要な情報を効率的に抽出し、活用する演習を行います。
ステップ1: 資料の準備 (5分)
まず、研修資料をNotebookLMに読み込ませます。
- 下の青いボタン「『高等学校キャリア教育の手引き』をダウンロード」を**右クリック**し、「名前を付けてリンク先を保存」を選択して、PDFファイルをPCの分かりやすい場所(デスクトップなど)に保存してください。
- 次に、その下の青いボタン「NotebookLM を開く」をクリックしてください。新しいタブが開きます。
- NotebookLMの画面にある「+ 新規ノートブック」をクリックします。
- 「ソース」の項目にある「PDF」をクリックし、先ほどPCに保存したPDFファイルを選択してアップロードします。アップロードには少し時間がかかります。
「高等学校キャリア教育の手引き」をダウンロード
NotebookLM を開く
ステップ2: NotebookLMで質問する (15分)
資料をアップロードしたら、AIに質問してみましょう。一番下にある質問ボックスに、以下の質問を一つずつコピー&ペーストして実行してください。
演習1:情報の検索
特定の情報を、資料のページ数を探すことなく瞬時に見つけ出します。
この資料によると、高等学校のキャリア教育において、学校が特に留意すべき点は何ですか?
演習2:情報の要約
複雑な概念や定義を、分かりやすく簡潔にまとめさせます。
この資料に記載されている「社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力」について、4つの能力を簡潔に要約してください。
演習3:文書の作成
読み込ませた資料を基に、新しい文書の草案を作成させます。
この手引きの内容を基にして、新任の先生向けのキャリア教育に関する研修で伝えるべき要点をまとめた箇条書きのメモを作成してください。
Part 5: 演習 - 協働的な学びのデザイン (15分)
【グループワーク】
これまでに紹介したツールを組み合わせ、具体的な授業改善のアイデアを検討します。
- 3〜4人のグループを作ります(可能な限り、異なる教科の先生方で構成してください)。
- テーマ: 「Geminiでアイデアを出し、NotebookLMで学校の規定や過去の事例を参照しながら、生徒の『協働的な学び』を促進する新しい学校行事または授業を企画する。」
- 成果物: 企画の概要(目的、内容、AIの活用場面)を簡潔にまとめます。
- いくつかのグループに内容を発表していただきます。
Part 6: まとめと質疑応答 (5分)
まとめ
生成AIは、正しく活用すれば、教育活動における強力な支援ツールとなります。重要なのは、AIを「便利な道具」として使いこなし、教員の皆様にしかできない、生徒との対話や創造的な活動に、より多くの時間を充てていただくことです。
AIは誤った情報を生成する場合もあります。そのため、最終的な判断と責任は、使用者である先生方ご自身にあることをご理解ください。本日の研修内容を、明日からの授業準備や校務に、ぜひ一つでもお試しいただければ幸いです。
【参考】AI活用 クイックリファレンス
【Gemini】対話型AI
- アイデア出し:
〜に関するアイデアを10個提案してください
- 文章作成:
〜についての案内文を作成してください
- 個別対応教材:
〜をテーマに、3段階の習熟度別問題を作成してください
- 活用のコツ:
あなたは〇〇の専門家です のように、AIに役割を与えることで、より的確な回答が得られやすくなります。
【NotebookLM】資料活用AI
- 使い方: ①資料をアップロード → ②質問する
- 活用例: 検索、要約、FAQ作成、議事録からのタスク抽出など
- 活用のコツ: まずはご自身の担当業務に関する資料をいくつか登録して試すことをお勧めします。
【重要な留意点】
- AIの回答を鵜呑みにせず、必ず内容の事実確認(ファクトチェック)を行ってください。
- 個人情報や機密性の高い情報は入力しないでください。
おまけ: 職員会議の議事録作成 - AI活用術
時間のかかる議事録作成は、AIの活用で最も効果を実感しやすい校務の一つです。以下の3ステップで、作成時間を大幅に短縮することが可能です。
ステップ1: 録音とテキスト化
まず、会議の音声を録音します。スマートフォンのボイスメモ機能などで問題ありません。録音した音声は、AIが読み取れるようにテキスト(文字)に変換します。
Chromebookでも利用できる無料の文字起こしツールは多数あります。Googleドキュメントの音声入力機能や、Webサービスを利用する方法が考えられます。
ステップ2: AIによる要約と整形 (Gemini活用)
文字起こしされたテキスト全体をコピーし、Google Geminiに貼り付けます。そして、以下のプロンプトを追記することで、議事録の骨子が自動的に生成されます。
あなたは優秀な書記です。以下の会議の文字起こしテキストを読み、下記の形式で議事録を作成してください。
# 職員会議 議事録
**日時:** 202X年XX月XX日 XX:XX〜XX:XX
**場所:** (例: 第1会議室)
**出席者:** (不明な場合は空欄のままで構いません)
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### 1. 議題ごとの決定事項
* (議題1のテーマ)
* (決定事項を箇条書きで簡潔に記述)
* (議題2のテーマ)
* (決定事項を箇条書きで簡潔に記述)
### 2. 今後の対応事項(ToDo)
* **担当者:**
* **対応内容:**
* **期限:**
### 3. その他・共有事項
* (議論の中で出た重要な共有事項や連絡事項をまとめる)
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ステップ3: 人間による最終確認と仕上げ
AIが生成した議事録の草案を、担当者が最終確認します。特に、以下の点の確認が重要です。
- 事実確認: 決定事項や担当者、期限などに誤りはないか。
- ニュアンスの確認: AIが省略した部分に、重要な背景や議論の経緯が含まれていないか。
- 体裁の修正: フォーマットを整え、公式な議事録として完成させる。
重要: 録音に関する留意点
職員会議を録音する際は、情報管理の観点から、必ず事前に参加者全員の同意を得てください。無断での録音はトラブルの原因となり得ます。プライバシーと信頼関係の尊重を最優先してください。